働き方
M&A業界の仕事は激務か
公開日 2026年/読了目安 5分
M&A業界の仕事は業務工程が多く多忙を極めます
近年、少子高齢化による後継者不足や事業承継の悩みを抱える経営者が増え、市場が急成長しています。若手からの高年収や専門知識の修得が可能なため人気です。入社2〜3年で数千万円や1億円以上の給与を得る人もいます。
インセンティブ比率が高く高年収を得られる反面、ノルマが厳しく激務という印象を持たれがちです。実際の働き方は会社や部署で異なります。アドバイザー1名で全工程を担当することは稀で、2から3名のチーム制が主流です。社内分業や外部委託、金融提携を行う企業もあります。
残業時間は平均30から50時間、多い時期で80から100時間程度です。企業価値評価の算出、相手先候補の選定、企業概要書や各種契約書の作成、デューデリジェンス対応などが主な業務です。
主要工程に大半を費やし、約1ヶ月かかるデューデリジェンス期間は残業が増えます。実績次第で数千万円や数億円を稼げる業界のため多忙ですが、私生活の消失や体調を崩すほどの過酷さではありません。
高収入や成長性など転職には5つの大きな利点があります
1点目は業界の成長性です。日本企業の90%を占める中小企業の経営者平均年齢は62歳前後で、事業承継期を迎えています。2009年のリーマンショック以降、成約数は毎年増加中です。後継者不足による事業承継型や、海外企業・他業種との成長戦略型M&Aにより、向こう10年から15年は非連続的に成長します。
2点目は高水準な給与です。上場企業年収ランキング上位のM&Aキャピタルパートナーズをはじめ、GCA(2021年Houlihan Lokeyが買収・統合)、ストライク、日本M&Aセンターなどが代表例です。高額な手数料設定と高い利益率に加え、2から3名で億単位の案件をこなす生産性が高年収を可能にします。
3点目は会計、税務、法務、金融といった専門スキルの習得です。他業界でも通用し市場価値を高められます。4点目は独立につながる点です。個人のアドバイザーに顧客がつきやすいため、経験と人脈を生かしてコストをかけずに起業できます。将来の独立を目指す方にも適しています。
5点目は完全な実力主義です。年功序列ではなくインセンティブ比率が高い給与体系で、年次に関係なく成約数や金額で年収が決まります。若くして役職や高収入を獲得できます。
成果主義と多忙さという3つの留意点が存在します
留意点の1点目は実力主義のシビアさです。成果を出せなければ基本給のみとなります。福利厚生や自動昇進を求める人には不向きです。「経営者の承継問題に取り組みたい」「専門性を高めたい」「成果を残したい」「起業の土台を作りたい」といった明確な軸が必要です。
2点目は時期による業務のハードさです。繁忙期は平均残業80から100時間程度となり、終電帰宅や徹夜が発生します。年間1から5件を同時並行で進めるため、案件重複時は人一倍の体力・気力・精神力が必要です。
3点目は常に勉強が必要な点です。案件ごとにビジネスモデルが異なるため業界理解のインプット・アウトプットが必須です。経営者と同等の知識がなければ初回訪問で信頼を失います。法改正も頻繁なため情報収集が欠かせません。
企業マッチングから価値評価まで幅広い業務を担います
マッチング業務では提出資料を基に企業名を伏せた概要書を作成し、買い手候補を選定します。絞り込み前をロングリスト、絞り込み後をショートリストと呼びます。単なる売買希望ではなく双方のシナジー効果を判断します。
交渉業務では条件面の調整を行い、利益相反する双方の落としどころを探り契約書に落とし込みます。調整する主な契約書は秘密保持契約書(NDA)、基本合意契約書(LOI)、最終合意(DA)です。
NDAは初回面談時の情報漏洩を防ぎます。LOIはマッチング後の条件調整用で多くは法的拘束力を持ちません。DAは成約に向けた最終決断で取引条件や誓約事項、表明保証を含み法的効力が発生します。
デューデリジェンスは買い手による売り手の調査業務です。財務、税務、法務、人事、ビジネス、ITなどに及び、反社チェック、土壌汚染、逮捕歴、違法建築も調べます。士業やコンサルが1から2ヶ月で行います。あわせて企業の価値を算定するバリュエーション(企業価値評価)も実施します。
繁忙期と閑散期で勤務スタイルが大きく変化します
閑散期の1日
- 09:00〜09:30 出社またはリモート
- 10:00〜 案件進捗確認MTG
- 12:00〜 昼食
- 13:00〜18:00 資料作成、案件先フォロー、新規アポ取得
- 18:00〜19:00 退社
繁忙期の1日
- 09:00〜09:30 出社
- 09:30〜 チームの案件進捗MTG
- 10:00〜 商談用資料作成、新規商談先アポ電話
- 12:00〜 商談(1日平均2アポ程度)
- 17:00〜 作業(企業概要書、企業価値評価、ロングリスト作成)
- 21:00〜 夕食
- 21:30〜 翌日の商談準備
- 23:30〜 退社
売り手担当を中心に週の半分が出張となる場合もあります。商談間に資料作成や新規アポ獲得を行うため繁忙期は終電帰宅も多々あります。閑散期は定時退社が可能で自己研鑽に充てられます。分業制や外部委託、提携など会社の体制を見極める必要があります。
法人営業の実績や専門資格があると選考で優位に立ちます
未経験からの転職は難関ですが準備次第で内定率は変わります。必須資格はないものの業務に付随する資格が存在します。
優位になる主な資格
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士
- 中小企業診断士、米国公認会計士(USCPA)、日商簿記(1級または2級)
- ファイナンシャルプランナー
- 事業承継・M&Aエキスパート認定資格、M&Aスペシャリスト、JMAA認定M&Aアドバイザー、事業承継士
現職での営業実績も重要で、社内5%以内、最低10%以内が目安です。経営者に提案し約半年から1年伴走するため法人営業での顧客折衝能力が望まれます。
求められる主な資質
- 顧客折衝能力(対経営者)、コミュニケーション能力
- 社内調整業務、スケジュール管理、逆算能力
- 数字面での強さ、空気を読む力
- バイタリティー、熱意、根気、やり切る力
入念な事前準備を行い入社後の明確なビジョンを持つことが重要です。